インプラント治療後のメンテナンスと失敗を招くインプラント周囲炎

インプラントのメンテナンスと
細菌感染(インプラント周囲炎)

インプラント治療後はメンテナンスが必須となります。メンテナンスとは、患者さん自身による適切なセルフケアと定期検診です。
 
十分なメンテナンスが行われれば、インプラントが健康な状態で長期的に維持される事は多くの臨床研究により証明されています。逆に、メンテナンスを怠ると、インプラント周囲炎(インプラントの歯周病)など様々な問題が起こり、インプラント治療の成功率が下がる事が臨床研究により報告されています。
 
インプラント治療は高額のため、患者さんからは、「一生もちますか」という質問が多いようですが、天然歯と同様に、適切なメンテナンスを行わなければインプラントは長持ちしません。 また、メンテナンスにより、口の中を清潔な状態に保つことは、インプラントはもちろん、残っている歯の寿命を伸ばすことにつながります。

インプラント治療後は適切なメンテナンスが必要です

口の中を清潔に保つための基本は、毎日のセルフケアです。インプラントおよび残存歯を清潔に保つ事により、インプラント周囲炎の発症が予防できます。もちろん、定期検診時には歯科医院でクリーニングしてもらいますが、毎日検診に行く事はできませんので、患者さん自身で適切なセルフケアを行う事が重要です。
 
ヨーロッパの研究では、大多数の人は、歯ブラシによる清掃だけではプラーク(歯垢)全体の50%しか除去できなかった、と報告されています。そのため、歯ブラシが届きにくい歯間部のプラークを除去するため、デンタルフロスや歯間ブラシの併用が必須です。

セルフケアのための歯ブラシ選び

歯ブラシは自分の口に合ったものを選びましょう。歯列不正で歯が重なってしまっている部位や、奥歯・親知らずなど磨きにくい部位には、先が細くなっている特別な形状のブラシ(タフトブラシ)を併用すると、汚れが取れやすくなります。
 
歯ブラシは毛先が広がってきたら交換が必要です。一般的には、1ヵ月を目安に交換すると良いと言われています。毛先が広がってくると、せっかく磨いてもブラシの先がきちんと当たらず、プラークを取り残してしまいます。
インプラントにプラークが蓄積すると、インプラント周囲炎のリスクが高まりますので、歯ブラシは定期的に交換する事をおすすめします。

歯科医院での定期検診を必ず受けましょう

治療後にインプラントに不具合やトラブルがなくても、歯科医院で定期検診を受ける必要があります。検診の頻度は、口の中の清掃状態・全身の健康状態・歯周病のリスクなどを考慮して決定します。

定期検診が必要な理由
  • セルフケアの質が高まる
    歯科医院では、患者さんの口の中の状態に合った磨き方や清掃器具についてのアドバイスをもらいます。
    また、以前はきれいに磨けていても、仕事などで忙しくて歯磨きが疎かになり、磨き残しが多くなってしまう事があります。
    自分では気づかない事もあるので、定期的に清掃状態をチェックしてもらい、磨き残しやすい部位を認識すると共に、いつも口の中を清潔に維持するよう意識する事が大切です。
  • プロフェッショナルケアによる清掃
    自分ではよく磨いたつもりでも、十分に汚れを除去できていない事があります。そのため、定期的にチェックを受け、蓄積した汚れを除去してもらいます。
    歯石や歯面に付着したバイオフィルムと呼ばれる膜状の構造物(細菌の塊)は歯ブラシでは除去できませんので、専用の器具を用いてこれらを定期的に除去することで、口の中を清潔に保つ事ができます。
  • トラブルが起きる前の予防が大切
    天然歯に限らず、インプラントでもトラブルが起こらないよう予防する事が非常に大切です。
    インプラントはむし歯になりませんが、歯周病に似た「インプラント周囲炎」になる事があります。インプラント周囲炎の初期の段階で治療すれば健康を取り戻せますが、進行すると手遅れになる事もあります。
     
    インプラント周囲炎は通常の歯周病よりも治療が難しいため、インプラント周囲炎にならないよう定期的にチェックを行い、予防する事が大切です。
定期検診の主な内容
  • 口の中のチェック
    インプラントを長く機能させるためには、インプラントだけでなく、口の中全体の健康維持が必要です。
    インプラント周囲の粘膜の状態および残存歯のむし歯・歯周病について診査を行います。また、被せ物や詰め物の状態もチェックします。
  • レントゲン検査
    定期的にレントゲンを撮影し、インプラントを支える顎の骨の状態や残っている歯の状態などを確認します。
  • 噛み合わせのチェック
    咬み合わせは徐々に変化しますので、定期的にチェックし、必要があれば調整を行います。
    咬み合わせのバランスが悪くなり、インプラントへの負担が増えると、インプラントの人工歯が欠けたり、インプラント内部のネジが緩む事があります。また、残存歯への負担が増えると、歯根が破折したり、被せ物が欠けたり外れてしまう事もあります。  
    インプラントおよび口の中全体の健康を維持するためには、定期的な咬み合わせのチェックが必要となります。
  • ブラッシング指導
    磨き残しやすい部位をチェックし、適切な磨き方および清掃器具についてアドバイスをもらいます。
  • クリーニング
    専用の器具や薬剤を使用して、インプラントおよび残存歯をクリーニングします。自分では除去できない汚れを定期的に取り除くことで、トラブルの発生を予防します。

メンテナンスが不十分になると…

口の中が不衛生になると、天然歯がむし歯や歯周病になるように、インプラントにもトラブルが生じます。
インプラント自体はむし歯になりませんが、インプラント周囲の粘膜に炎症が起こると「インプラント周囲粘膜炎」、それが進行すると、インプラントを支える骨が溶ける「インプラント周囲炎」になります。

インプラント周囲炎とは?

インプラント周囲炎とは、簡単に言うとインプラントの歯周病で、インプラントを支える顎の骨が溶けている状態です。

インプラント周囲炎が起こる原因

インプラント周囲炎が起こる原因は、プラーク(歯垢)に含まれる細菌です。プラークはブラッシングで除去できますが、磨き残しがあると細菌は増殖し、インプラント周囲の粘膜に炎症を起こします。
適切なセルフケアおよび定期的なメンテナンスでプラークを除去することにより、インプラント周囲炎を予防することができます。清掃状態が悪くプラークが蓄積した状態が続くと、インプラント周囲炎のリスクが高くなります。

インプラント周囲炎の症状

インプラント周囲炎では、以下のように、歯周病と同様の症状が現れます。

  • インプラント周囲粘膜の腫れ
  • 粘膜からの出血
  • 膿が出る
  • ポケット(インプラントと粘膜の隙間)が深くなる
  • 粘膜の退縮(粘膜が痩せて下がる事)
  • インプラントの動揺・脱落
    など
インプラント周囲炎は進行しやすい

インプラント周囲炎は、歯周病よりも進行しやすいという報告があります。また、歯周病に比べて、治療が困難なケースが少なくありません。治療しても改善しないケース、あるいは骨の吸収が進行して治療による改善が期待できないケースでは、インプラントを抜かなくてはなりません。
 
インプラントを健康な状態で長く維持させるためには、歯科医師の指示に従って適切なセルフケアを行い、定期的な検診を受け、インプラント周囲炎を予防することが大切です。

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