奥歯をインプラントにするメリットと注意点

奥歯をインプラントにするメリットと注意点


奥歯は食べ物を噛む上で、大変重要な役割を果たしています。さらに、奥歯がない状態が続くと、しっかり噛めないだけでなく、体にさまざまな悪影響を与えてしまうのです。ここでは、部分入れ歯にはないさまざまな奥歯のインプラントのメリットをご紹介します。

奥歯のインプラントのメリット・デメリット

抜歯などにより奥歯がなくなった場合、インプラントや入れ歯、ブリッジなどの治療法がありますが、それぞれの治療法にはメリットがあればデメリットもあります。どの治療法にしたらいいのか迷っている人にとっては、どちらも気になることと思います。

その中でも、奥歯の治療に最適といえるのがインプラントです。「奥歯の一本くらいなくても」とか「目立たない奥歯をインプラントにするなんて…」と思われるかもしれませんが、奥歯こそインプラントの長所が十分に生かされる場所だといえます。

知っておきたい奥歯の大切な役割

各歯と臼歯の名称

奥歯とは、第一大臼歯から第三大臼歯までの歯のことで、上下左右合わせて合計12本あります。その名の通り、餅つきに使われる臼のような形をしていることから、食べ物を噛んだ時に細かくすり潰すことに優れています。

第一大臼歯は、食べ物を噛む際に重要な役割を果たしている歯で、噛む力は歯の中で最も大きいほか、第一大臼歯によって噛み合わせの高さが決まります。そのため、第一大臼歯がないとしっかり噛めなくなってしまうだけでなく、噛み合わせ全体が崩れてしまうのです。

また、12歳前後に生える第二大臼歯は、斜めになったり、第一大臼歯にぶつかったりと、正常に生えてこない割合が意外と高い歯です。第三大臼歯は一般的に「親知らず」と呼ばれる歯で、中に埋まったまま生えてこない人や、最近では歯そのものがない人もいます。

奥歯をインプラントにするメリットは?

虫歯や歯周病で奥歯を失った場合、インプラントにするとどのようなメリットがあるのでしょう。代表的なポイントとして次の5つがあげられます。

入れ歯のような痛みや違和感がない

入れ歯は歯茎や健康な歯に負担がかかって痛い

食べ物を噛む際、前歯や犬歯と違って奥歯には大きな力がかかるため、入れ歯が合っていない場合、強く噛むと入れ歯が歯茎にあたって痛みを感じることがあります。それに対してインプラントは、自分の歯のように噛めるため、入れ歯のような違和感がありません。

しっかり噛めるようになる

歯を失った場合に行われる歯科治療の中で、咀嚼力が最も天然歯に近いと言われているのがインプラントです。インプラントの素材として使われているチタンは、骨に埋め込むと周囲の組織と結合する性質を持つため、時間とともに骨に根付いてしっかり噛めるようになります。

発音しやすくなる

奥歯がないと、そこから息が漏れるせいで、「き」「し」「ち」などのイ段の発音がうまくできない場合があります。また、入れ歯が合わないと、話している最中にずれたり外れたりすることがありますが、奥歯にインプラントを入れることによって会話中のストレスが軽減されます。

骨吸収の進行を抑える

ヒトの骨は骨代謝によって吸収と再生を繰り返し、新しい組織へと生まれ変わります。入れ歯やブリッジの場合、骨に刺激が伝わらないため骨吸収が進んでしまう一方、奥歯をインプラントにするとしっかり噛めるため、刺激が骨に伝わって骨吸収が抑えられます。

噛み合わせのバランスが整う

奥歯がないことで歯に加わる力が偏るためで、噛み合わせのバランスが崩れてしまいます。それにより、肩こりや頭痛などが引き起こされるほか、顔貌の歪みが生じることがあります。インプラントで噛み合わせを調整することで、体全体の左右のバランスが整います。

ここまで、奥歯のインプラントの良い点について見てきましたが、デメリットについてもしっかり理解しておく必要があります。

奥歯のインプラントのデメリット

他の治療に比べて費用が高額

インプラントは病気やケガの場合を除き、保険が適用されないため全額自己負担となります。さらに、インプラントに使われるチタンという金属が高価なため、インプラントの価格自体が高いこともあり、インプラント治療にかかる費用が高くなってしまいます。

骨量が足りない場合は骨造成が必要

周囲の歯がしっかりしていれば、入れ歯やブリッジの治療が可能ですが、インプラントの場合、骨の高さや量が不十分だと埋め入れることができません。そのため、GBRやサイナスリフトのような骨造成のほか、骨移植を行うことで十分な骨量を確保する必要があります。

治療期間の長期化

骨の状態や埋入方法によって個人差がありますが、入れ歯やブリッジなどの歯科治療に比べて、インプラント治療にかかる期間は長くなります。特に、2回法の場合は、インプラントが結合するのを待って最終的な歯を装着するため、治療が長期に渡ります。

奥歯のインプラント治療を受ける際の注意点

奥歯は食べ物を噛むために重要な役割を担うことから、インプラント治療では高い機能性が求められる部位だといえます。そのため、次のような点には十分な注意が必要です。

歯科用CTの画像診断が必要です

歯科用CT

インプラント治療を行う場合に必要となるのが、歯科用CTの画像をもとにした診断です。上の奥歯の場合、鼻の両脇に上顎洞と呼ばれる空洞があることから、骨の高さ不足になる可能性が高くなるため、CT画像をもとにインプラントを埋入する角度や深さを検討する必要があります。

また、下顎の骨の中を通る下顎管と呼ばれる管の中には、下歯槽神経や下歯槽動脈、下歯槽静脈が走行しています。手術中にインプラントを埋入する穴を作るドリリングを行う際、下顎管の傷つける恐れがあるため、事前にCT画像で位置を確認しておかなければなりません。

治療の妨げとなるリスク要因を減らしましょう

インプラント治療に喫煙はリスクファクターとなる

インプラント治療には、手術中に合併症や偶発症を引き起こしたり、骨結合や治癒を妨げたりするリスクファクターがあります。手術を受ける前に、それらの危険因子を可能な限り取り除き、治療の安全性を高めることが必要です。特に、糖尿病や心疾患、骨粗しょう症、貧血などの全身疾患には注意しましょう。

さらに、喫煙はインプラントの骨結合を妨げるほか、インプラント周囲炎を引き起こす原因となることから、インプラント治療を受ける上で大きなリスクとなります。そのため、タバコを吸う場合は担当医師と相談し、計画的に禁煙を進める必要があります。

定期的なメンテナンスを受けましょう

定期メンテナンスの重要性

インプラントを長く使い続けるためには、治療後のメンテナンスが大変重要となります。定期的に歯科医院を受診して、インプラントや周囲組織の状態を確認するほか、歯磨き指導やインプラントの周囲のクリーニングを行うことにより、インプラントの生存率や成功率を高まるのです。

特に、歯周病に似た症状のインプラント周囲炎は、処置が遅れるとインプラントの脱落を引き起こす恐れがあります。歯肉の腫れや出血、インプラントの動揺などの、インプラント周囲炎の症状を早期発見・早期治療するためにも、メンテナンスを忘れずに受けることが大切です。

ホーム 歯の豆知識 奥歯のインプラント