インプラントのトラブルが起こる原因とは?
インプラントは安全性の高い治療法とはいえ、必ずしも100%安全だと言い切ることはできません。安全な治療の実現に必要な正しい処置が行われなければ、インプラントの埋入後にトラブルが起こりやすくなるのです。
インプラントのトラブルにつながる主な5つの原因
ドリルの摩擦熱によるオーバーヒート
インプラント治療において、ドリルで顎の骨にインプラントを埋入するための穴を開ける際、ドリルの操作や注水に不手際があると、ドリリングによって発生する摩擦熱によってオーバーヒートが起こりやすくなります。それによって骨が火傷を負ったような状態になると、インプラントが骨とうまく結合しなくなってしまいます。
埋入位置や角度が不適切
インプラント治療の安全性は、検査結果をもとに立てた計画に従い治療を行うことで高まります。ところが、手術の際に、計画通りの位置や角度にインプラントが埋入されないと、術後に噛み合わせが悪くなるせいで、インプラントに無理な力がかかるほか、インプラントが骨を突き抜けてしまうなどのトラブルが起こる可能性があります。
インプラント周囲炎
天然歯の歯周組織が細菌に感染すると歯周病を発症するように、インプラントの周囲の組織が細菌に感染することで、歯肉の炎症やインプラントが脱落につながるインプラント周囲炎が起こります。
インプラント周囲炎は、不衛生な環境でインプラントの埋入を行ったことによる細菌への感染や、埋入後の不十分な歯磨きが原因としてあげられます。
喫煙による術後の治癒の阻害
タバコに含まれるニコチンの影響により血管が収縮することで、インプラント埋入部分に血液や酸素が十分に行き渡らなくなるほか、喫煙の際に発生する一酸化炭素によって酸素の運搬が妨げられると、術後の治癒不全につながります。そのため、最終的に骨の結合が妨げられる、インプラント周囲炎のリスクが高まる、といったことが起こりやすくなります。
外部からの強い刺激
インプラントの埋入手術の後、埋入部分に力が加わると骨との結合の妨げとなります。特に、硬い食べ物や無理な歯磨きは、治癒が認められるまで避ける必要があります。さらに、歯ぎしりや食いしばり、舌先で押したり触れたりする等の悪習癖については、治療前に医師に相談し、術後の対策を検討しておく必要があります。
安全性の高い治療のために必要なこと
インプラントは決して危険な治療ではなく、正しい治療を行うことで、トラブルを回避することは十分に可能です。インプラントのトラブルを防ぐためには、治療する医師側に経験や技術力が必要とされるとともに、患者さん側にも、インプラントを長く使い続けるための高い意識を持つことが求められます。
歯科用CTやガイド・システムの導入
インプラント治療の安全性を高めるために重要となるのが、治療をサポートする装置や機器の導入です。
中でも、患者さんのお口の状態に合わせて正しい位置にインプラントを埋入するためには、歯科用CTやガイド・システムは欠かすことができません。歯科用CTとは、X線撮影によって立体的な3D画像が得られる装置で、患者さんの歯や骨の状態の把握に役立ちます。
また、インプラント治療の精度を高めるためのガイド・システム「ガイデッドサージェリー」は、歯科用CTで撮影された3D画像をもとに、的確なインプラントの埋入位置を決定するほか、手術の際、計画通りに誤差なくインプラントを埋入するために用いられるテンプレート製作などを行います。
術後のメンテナンスの徹底
インプラントは埋入してしまえば、それで終わりというわけではなく、手術後にメンテナンスを行うかどうかが寿命に大きく影響します。そのため、インプラントの治療後は、医師の指示に従って定期的にメンテナンスを受ける必要があるのです。
インプラントのメンテナンスでは、歯肉の腫れや出血などのインプラント周囲炎の症状の有無や、インプラントのぐらつきなどを確認します。また、口腔内の清掃状況を確認して、汚れがひどい部分や清掃が難しい部分については、歯科衛生士がTBI(歯磨き指導)を行い、最後に、通常の歯磨きでは落とし切れない汚れをクリーニングして終了です。
悪習癖の見直し
喫煙は代表的なインプラントのトラブルの要因となることから、インプラント治療の成功には禁煙が大きな鍵を握ります。インプラント治療に対するタバコのリスクをきちんと理解して、可能な限り禁煙を行うことが重要です。しかし、それが無理な場合は、医師の指示に従って一定期間の禁煙に取り組む必要があります。
また、舌癖やブラキシズム(歯ぎしり)はインプラントと骨の結合を妨げることから、日中は意識的に止めることを心がけ、就寝時はナイトガードを使用するなどの対策が必要です。さらに、インプラントのリスクファクターである歯周病や糖尿病、高血圧などの既往歴がある場合は、定期的に検査を受けて症状をコントロールすることが重要となります。