インプラントの寿命~健康な口腔環境を保つ
ブリッジや入れ歯と違って、インプラントは歯を失った部分に直接埋め込むことから、寿命が気になるという方は多くいらっしゃいます。インプラントは、患者さんの使い方によって寿命を延ばすこともできるのです。
成功率の高さで分かるインプラントの寿命
スイスのベルン大学が行った、ストローマンインプラントで治療をうけた患者の10年間の研究報告によれば、痛みや異物感、動揺、インプラントの周囲に感染症がみられないなど、成功基準をクリアした割合(成功率)は全体の97%でした。また、インプラントが脱落せずに残っている割合(生存率)は98.8%と高く、この結果からインプラントの寿命の長さが分かります。
また、5年目の生存率と10年目の生存率とでは、ほぼ変わらなかったことが分かっているため、インプラントは正しい使い方をすることで、天然歯と同じように長く使い続けることができるのです。
インプラントの寿命を延ばす2つのポイント
インプラントは10年以上をお使いいただけるとはいえ、天然歯と同じように、お手入れをしなければ健康な状態を保つことはできません。インプラントの寿命を延ばすためには、次のようなケアが必要になります。
1.定期的にメンテナンスを行う
手術後はトラブルの有無にかかわらず、治療を受けた歯科医院でメンテナンスを受ける必要があります。メンテナンスの主な目的は、トラブルの早期発見と歯のクリーニングを行うプロフェッショナルケアで、定期的に行うことによって、インプラントの脱落につながるトラブルを未然に防ぐことができるのです。
歯科医院で行われるメンテナンスでは、次のようなことが行われます。
口腔内のチェック
インプラントのぐらつきやゆるみのほか、歯肉や粘膜の状態などのお口の状態を確認します。また、インプラントに負担がかかっていないかをチェックするために、噛み合わせを見ます。
レントゲン撮影
インプラントを埋入した部分をレントゲンで撮影することによって、周囲の骨としっかり結合しているかどうかを確認するほか、骨吸収などのトラブルのもとがないかをチェックします。
クリーニング
普段の歯磨きが不十分だと、たまった歯垢に細菌が繁殖することにより、歯肉で炎症がおこるインプラント周囲炎を発症する恐れがあるため、通常の歯磨きでは除去が難しい歯垢や歯石を取り除きます。
TBI(ブラッシング指導)
歯磨きには、人それぞれ癖や磨くのが苦手な部分があることから、磨き残しをなくすための正しい歯の磨き方のほか、デンタルフロスやタフトブラシの使い方などの指導を受けます。
2.歯磨きによるプラークコントロール
インプラントの代表的なトラブルともいえるインプラント周囲炎を防ぐには、日頃の歯磨きが大変重要です。インプラント周囲炎によって歯肉の炎症が進むと、インプラントを支える骨の吸収が起こり、最悪の場合は埋入したインプラントが抜け落ちてしまうのです。
インプラント周囲炎を防ぐためには、インプラントの周囲を清潔に保つ必要があることから、毎日きちんと歯磨きを行って、プラークコントロールを心がける必要があります。
インプラントの寿命に影響を与えるトラブル
インプラントを長く使い続けるためには、インプラントのトラブルにつながる要因を取り除かなければなりません。特に、次のような項目に当てはまる場合は、主治医と相談の上、治療を進めていく必要があります。
インプラントを長く大切に使う歯科医院選び
トラブルなくインプラントの寿命を長くするためには、インプラント治療だけでなく、事前検査をしっかり行っている歯科医師を選ぶことも重要です。特に、インプラントの禁忌とされている歯周病や高血圧、糖尿病などの症状は、本人も気付いていない場合があるため、血液検査や尿検査、血圧の測定などが重要となるのです。
また、中には稀に、インプラントに使われているチタンにアレルギー反応を起こす方がいらっしゃるため、アレルギーの有無や既往歴などを確認するための問診も大切になります。
そのため、インプラントの治療だからといって口腔内の検査やレントゲン・CT撮影にとどまらず、しっかりとした全身の検査を行うことも、インプラントの寿命の延伸につながるのです。