インプラントを考えるタイミング
インプラント治療は、すでに歯を失った部位に対して行う治療です。あるいは、これから抜歯が必要な部位に対して抜歯後に行うこともできます。歯を1本~数本失った場合はもちろん、すべての歯を失った場合もインプラント治療の適応となります。
インプラント治療の適応症
歯周病やでむし歯で歯を失ったとき
2005年に全国2000軒の歯科医院に対して行われた調査によりますと、抜歯の原因として最も多かったのは歯周病が43%、次がむし歯で32%でした。
歯周病やむし歯によって歯を失った場合、インプラント治療により歯を補うことが可能です。
歯根破折または事故により歯を失ってしまったとき
何らかの外力によって、歯が折れたり抜けてしまうことがあります。歯根が折れた場合、多くは保存が難しく抜歯の適応となりますが、インプラントによる治療が可能です。また事故により歯が抜けてしまった場合も、インプラント治療により歯を補うことが可能です。
生まれつき歯が足りない(先天性欠如歯)
生まれつき乳歯も永久歯もなく歯が生えてこない場合、あるいは乳歯が抜けたあと永久歯が生えてこない場合、インプラント治療により歯を補うことが可能です。
インプラント治療のリスクファクター
インプラント治療ができない場合
歯周病など、口腔内が清潔でない状態
歯周病の原因となる歯周病菌がインプラント周囲の粘膜に感染して、インプラント周囲炎のリスクが高まります。
逆に、歯周病を治療した場合は定期検診とメンテナンスを行うことで、インプラントは長期的に維持されることが臨床研究により証明されています。
糖尿病で血糖値がコントロールされていない状態
血糖値がコントロールされていない状態では、インプラントが骨とうまく結合しないリスクが高まります。逆に血糖値がコントロールされていれば、インプラント治療の成功率は非糖尿病患者と同等であると臨床研究により報告されています。
成長期の方
顎骨が成長している途中でインプラント治療を行うと、骨の成長が妨げられます。個人差はありますが、通常は20歳以降を目安にインプラント治療を行います。
一般的に外科手術ができない場合
- 妊婦
- 免疫機能が著しく低下した状態
- 6か月以内に心筋梗塞の既往がある場合
などでは、外科的手術は行えません
インプラント治療に際して注意が必要な場合
- 放射線治療
- ビスフォスフォネート製剤
- 癌治療のため化学療法
- 抗凝固剤
- 免疫抑制剤
上記の治療を行っている(行った)場合、全身状態および治療内容によりインプラント治療ができない場合がありますので、主治医と相談する必要があります。
喫煙
喫煙により、ニコチンが口腔粘膜の毛細血管を収縮させます。これにより、粘膜の血行が悪くなり免疫機能が低下し、傷の治癒が遅れます。
インプラント手術後の治癒が遅れると、長期的にはインプラント周囲炎のリスクが高まります。また、残存歯は歯周病になりやすく、歯周病治療の成功率が下がることが報告されています。
インプラントおよび残存歯を健康な状態で長く使うため、禁煙または節煙することが推奨されています。
骨量が不足している場合
インプラントは顎の骨に埋め込みますので骨量が不足していると、手術時にインプラントがしっかり固定されなかったり、長期的にはインプラント周囲の骨が吸収されたりする可能性が高まります。
骨量が不足している場合は、骨造成治療を併用してインプラント手術を行います。
インプラント治療の難易度
歯が1本欠損している場合はもちろん、全ての歯が欠損している場合もインプラント治療の適応となり、個々の症例によって難易度は異なります。
欠損している歯の本数が多い場合や、骨造成治療が必要な場合、全身の健康状態が良くない場合には難易度が高くなります。
治療のメリット・デメリットを考慮した上で、インプラント治療を受けるかどうか判断しましょう。