ドライマウスによる弊害
健康な成人の場合、唾液は1日に平均1.5リットルほど分泌されます。ドライマウスは何らかの理由によって唾液が減少し、口腔内が乾燥した状態です。「口腔乾燥症」とも呼ばれており、女性に多く現れる症状です。
唾液の分泌は口腔内の健康維持に大きく関わっています。そのため、唾液が減少してドライマウスになると、以下のようなトラブルが現れるようになります。
※唾液の働きの詳細については、「唾液 – 1日の分泌量/効果/減少の影響/増やす方法」のページをご覧ください。
虫歯・歯周病の発症リスクが高まる
唾液には、口腔内の汚れを洗い流して衛生を保つ作用があります。そのため、ドライマウスになると口腔内の衛生が維持できなくなり、虫歯や歯周病にかかりやすくなります。
食事が困難になる
唾液には、味蕾(みらい)と呼ばれる味を感じる組織に味物質を届ける役割があります。そのため、唾液が少なくなると食べ物の味がわからなくなり、味覚障害に陥ります。
舌の痛み・ひび割れが発生する
ドライマウスにより口腔内の潤いが失われると、舌がひび割れて、痛みを伴うようになります。
口臭が悪化する
唾液には口の中を洗浄する自浄作用があります。ドライマウスになると唾液の自浄作用が働かなくなるため、口腔内に汚れが溜まりやすくなり、口臭が悪化してしまいます。
※口臭の詳細については、「口臭の原因は口の中に!?口の臭いの原因/予防/対策方法」のページをご覧ください。
ドライマウスの原因
ドライマウスの原因には、実にさまざまなものが挙げられます。
原因その1
緊張・ストレス
緊張やストレスにさらされると、交感神経が優位となり唾液の分泌量が減少します。さらに、粘液性の唾液が分泌されるため、口腔内が乾燥しやすくなります。
なお、反対にリラックスした環境下においては、唾液の量が増え、サラサラとした唾液が多く分泌されるようになります。
原因その2
口呼吸
副鼻腔炎(蓄膿症)やアレルギー性鼻炎による鼻づまり、アデノイド肥大、歯並びの乱れなどによる影響で口呼吸をしていると、口腔内が乾燥し、ドライマウスの原因につながります。
原因その3
薬の副作用
抗うつ剤や鎮痛剤、抗ヒスタミン薬など、薬の中には副作用として口渇(唾液が減る)が現れる薬があります。
原因その4
放射線治療による影響
放射線治療を行う際、唾液を分泌する唾液腺組織が破壊されて唾液の分泌が正常に行われなくなることがあります。
原因その5
口腔周辺の筋力の低下
唾液を分泌する唾液腺は噛むことにより刺激されます。年齢を重ねるごとに口周りの筋力は低下し、噛む力も衰えてくると、唾液の分泌がスムーズに行われなくなります。
その他の疾患
難病指定されている自己免疫疾患のシェーグレン症候群や更年期障害、腎不全、糖尿病など、何らかの疾患の一症状としてドライマウスが引き起こされる場合もあります。
シェーグレン症候群の場合は唾液だけではなく涙の量も減少しますので、ドライアイの症状も見られます。
ドライマウスの治療法
ドライマウスへの主な対症療法として、人工唾液や唾液の分泌を促進する薬物療法、筋機能療法などが挙げられますが、治療方法は原因により異なります。そのため、自分のドライマウスの原因が何なのかを明確にすることが治療の第一歩となります。
日常生活に支障をきたすほどの状態であれば、早めに口腔外科や歯科、ドライマウス外来を受診し、適切な治療を受けましょう。その後は原因に応じて、婦人科や循環器内科、眼科など、他の医科との連携のもと治療が進められます。
ドライマウスの予防法
ここでは、日頃から行えるドライマウスの予防法をご紹介します。
こまめに水分補給する
唾液には様々な成分が含まれていますが、その大半は水分です。つまり、水分不足に陥ると唾液が生成されませんので、こまめな水分補給を心掛けることが大切です。
キシリトールガムを噛む
ガムを噛んで唾液腺を刺激することは、唾液の分泌促進につながります。なお、ガムはキシリトール配合のものを選ぶようにし、虫歯予防にも配慮しましょう。
鼻呼吸を意識する
口呼吸の原因はさまざまですが、普段から意識して鼻呼吸を心掛けることも、ドライマウスを防ぐ上で重要なことです。