歯並びについて~歯列不正の種類とその治療方法~
歯並びが悪いこと(歯列不正)をコンプレックスに感じる人は少なくありません。歯並びが悪いと見た目に影響するため、自分に自信が持てない、思いっきり笑うことができないなど、精神面への影響は大きいと言えるでしょう。
また、口の中が不衛生になりやすく、咀嚼・発音がしづらい、顎に負担がかかるなどのデメリットもあります。歯並びは、心の健康、口の中の健康、ひいては全身の健康にも影響しているのです。
そもそも、歯並びが悪くなるのはどうして?
歯並びが悪くなる原因には、顎の大きさなど遺伝的な原因がありますが、生活習慣の中に原因が潜んでいるというケースもあります。
指しゃぶりや爪噛み、舌癖など、歯に力が加わる習慣を継続していると、歯並びに影響してきます。
また乳歯がむし歯になり、通常抜け落ちる年齢よりも早く抜歯すると、抜いたスペースに周りの歯が寄ってきて、永久歯が綺麗に生えてこないことがあります。
大人になってから歯並びが悪くなることもあります
むし歯や歯周病も歯並びに悪影響を及ぼします。特に、歯周病は歯を支えている歯槽骨が溶けてしまうため、歯が動きやすくなります。
またむし歯や歯周病が原因で抜歯した場合、抜いた部位に歯を補わず放置すると、周りの歯が動いてしまうことがあります。
歯並びが悪いと病気のリスクが高まる
歯並びが悪いと、歯ブラシが届きにくい部位があるため、むし歯や歯周病のリスクが高くなります。
歯列不正の種類とその原因
歯列不正の種類には、次のようなものがあります。
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叢生(そうせい)
顎が小さいため、歯が正常に生えるスペースが十分になく、歯が重なり合って生えてくる状態を言います。
八重歯もこれに含まれます。厚生労働省の調査(平成23年)では、不正咬合の種類の中で叢生が最も多い(全体の43%)ということがわかっています。 -
上顎前突(出っ歯)
上顎前歯が下顎前歯よりも標準値を越えて前方に突出している状態を言います。
先天的な原因として、上顎骨が下顎骨より大きいといった遺伝的な要因が関係していることがあります。
後天的な原因としては、指しゃぶりや舌癖(舌で前歯を押す)などにより、前歯に継続的に力がかかり、突出してしまうことがあります。 -
下顎前突(受け口)
上顎前歯よりも下顎前歯が前に出ている状態を言います。遺伝的な要因や、口呼吸・舌癖などが原因になります。
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開咬(オープンバイト)
奥歯が咬みあった状態で、前歯が咬みあわず、上下の前歯に隙間がある状態です。そのため、前歯で物を咬み切ることができません。
遺伝的要因や、おしゃぶりの使用・口呼吸・舌癖などが原因になることもあります。
歯並びを治す「矯正治療」とは?
子供の矯正治療を「小児矯正」と呼びますが、子供の矯正治療と大人の矯正治療では違いがあります。
生え変わり途中で乳歯が残っている子供の矯正治療は、顎の成長をコントロールし、骨格を改善しながら治療を進めていきます。そのため、抜歯せずに済む可能性があります。
一方、大人の歯列矯正は、歯の1本1本に「ブラケット」という装置をつけ、ブラケットにワイヤーを装着して歯を動かしていきます。顎のスペースが不足しているために、歯を綺麗に並べるのが難しい場合には、抜歯が必要になることがあります。
大人の矯正治療
「子供の頃に矯正治療をしておけば良かった」と考える人は多いかもしれません。しかし、大人になってからでも矯正治療をすることは可能であり、遅くはありません。
成人矯正のメリット・デメリット
- 治療について協力的である
治療について理解し協力的であることは、治療効果にも大きく影響すると言えるでしょう。 - 治療計画が立てやすい
生え変わりや顎の成長などを考慮する必要がないため、治療計画を立てやすいというのは大きなメリットでしょう。 - 小児矯正と違い、すぐに治療を始められる
永久歯の生え変わりを待つ必要がないため、すぐに治療を開始できます。
- 抜歯が必要になる可能性がある
子供の矯正治療に比べ、抜歯が必要になる可能性が高いと言えるでしょう。 - 治療期間が長くなる場合がある
小児矯正は顎の成長を利用するため、比較的スムーズに歯を動かせるケースが多いですが、大人の場合は顎の成長を利用できないため、治療期間が長くなりやすいと言えるでしょう。
目立たない矯正が人気を集めています
以前は金属製の金具(ブラケット)を歯の表に装着して矯正を行っていました。
近年は、金属製ではなく、プラスチックやセラミックを使用したクリアーブラケットにワイヤーを使用することで、装置が目立ちにくくなっています。また、歯の裏側(舌側)にワイヤーを装着する方法もあり、大人になってから矯正治療を開始する人が増えています。
ワイヤー矯正のメリット・デメリット
ブラケット装置を使った「ワイヤー矯正」は、実績があるので安心して治療をできます。また、先にも紹介しましたが、目立たないブラケット装置を使用することで「金属の装置が目立ってしまう」という従来のデメリットは解消することも可能です。
しかし、ワイヤー矯正には次のようなデメリットもあるため、治療を始める際には短所を把握しておくことも大切でしょう。
- 衛生管理が行いにくい
装置を付けることで、歯が磨きにくくなります。不衛生になると、むし歯や歯周病のリスクが高まるため、歯科医院で定期的に清掃を行うことが大切でしょう。 - 歯根吸収が起こる可能性がある
稀に矯正治療によって歯根吸収が起こることがあります。 - 保険が適用とならない
一般的な矯正治療は、保険が適用となりません。そのため、費用がかかります。